AX ブエノスアイレス:nueve | ハーレム通信




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ブエノスアイレス:nueve
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ぼくと薫は本当にいろんな話をした。人類の創生から洋服のデザインにおける意義まで、そのジャンルは多岐に渡った。だけどその中で敢えて話し合わなかった、巧妙に触れないようにしてきた話題がある。

それは性欲とセックスについてだった。

どうしてぼくらはそれについて語り合わなかったんだろう。言い方をかえれば必要なかったのかもしれない。

そうえいば昔、何がきっかけかもう忘れてしまったけれど「あたしってね、物事にたいして結構淡泊なんだよ。そっちに関してもね。だから平気なんだ」って、ボソリと言っていたような気がする。
確かに薫は全体的にみて淡泊かもしれないけれど、あえてそういう風にしているのかもしれない。田島くんの件をみれば、彼女が人一倍に物事に対して執着心があるのは、一目瞭然だった。

ぼくはどうなんだろう。

ぼくの性欲は多分平均、人並みだと思う。
そういったアンケート結果が手元にないからわからないけれど、大学時代の大城のように、一日に三人、それも朝、昼、夜とパートごとに別れていて、もちろん相手はすべて違う人とセックスして、それを二ヶ月続けるとか、そういったことはできなかった。
これはぼくと対局にある例かもしれないけれど、世の中にはそういった奴にいるってことだった。でもたしか、大城には彼女がいたはずだ。

「頭と心は別のものだね。なんていうのかな。だって女の人が目の前にいるんだよ。抱きたいって思うのは自然なことだよ」と、よく言っていた。「抱かないと相手に失礼だ」とも。

ぼくにはその理論が判らなかった。よく判らなかった。

確かに女性を抱きたいって思うことはあるし、人肌の暖かさは何者にも変えられないということは、1+1=2という公式のように、よく判った。

だからといって、目の前にいる女性すべてと抱き合えるのだろうか。

大学時代、まだ未央にであう前に、ぼくはつきあっていた女の子がいた。ぼくは彼女だけで十分だった。あえて薫的言い回しをするならば、ある意味ぼくも「淡泊」だったのかもしれない。

単純にいって、男のほうが女の人より性欲に対してどん欲だと思うのだ、ぼくは。大城の例を見るまでもなく、同じようなことをしている奴をぼくは何人も知っていた。

だけどぼくは違った。どうしてなんだか理由はわからない。だからこそぼくは、未央のことを四年も思い続けていうることができるのかもしれない。単純にぼくの性欲ということだけをピックアップしたら。

そうは言ってもぼくだって男だ。好きな女の人のぬくもりを感じてみたいと思うことは、普通のことだ。正常な男子だったら、そうだろう。だけどぼくはそれをしなかった。未央と抱き合うことをしなかったのだ。多分、強引にやろうと思えばできたことなのに。だけどそれをやってはいけないように感じることが幾度となくあったのだ、ぼくの中で。

それはまるで、神への冒涜のように感じられたのだった。

だけど、たまに耐えきれなくなる。
いっそ肌を重ねあわせてみようか。
そうすれば、ぼくの頭の中で成長し続けている未央が地上降りてきて、肉体と同調し、現実的形を帯びるはずだったから。

そんな考えに囚われたとき、ぼくは不本意ながら他の女の人と抱き合うのだ、未央のこと思いながら。

なんて不健康な行為。
他の女の人を好きになれたら、どんなに幸せだろう。

ぼくは何度も何度も、そう思った、他の人と抱き合いながら。

事実、こんなぼくに興味を持ってくれた女性が、ささやかながら何人かいたのだ。だけど他の女の人と肌を重ねるたびに、ぼくは確認するのだった。

未央のことが、狂おしいほど好きだって。
たとえそれが、形として目の前になくとも。

未央がぼくの前から姿を消して、丸二年が経っているというのに、それでもぼくは相変わらず彼女のことを想い続けているのだった。ことあるごとにビデオテープを巻き戻すように、何度も何度も彼女の声と、表情を、思い浮かべた。

それはまるで周期的に、観測ポイントを一秒たりともずれることなく、地球の周りを回っている人工衛星のようにやって来た。そして願わくは、ぼくはお互いに影響しあっている、月と地球の関係になりたいのだ。未央が太陽で、ぼくが月。そういった関係に。

そしてある、夏の暑い日、それは未央がぼくの目の前から姿を消した時と同じような日に、未央からの絵はがきが届いた。
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