AX ブエノスアイレス:seis | ハーレム通信




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ブエノスアイレス:seis
venezuera



「時々ね、東京で生活するのに疲れるなって思うの。ものすごーーーくね。どうして人はこんなにもあせって移動をしてるのだろうって。なんでこんなにも何もかも流れが速いんだろうって。

「情報はあふれ過ぎているし、その情報にうまく乗れなかったら人間失格じゃないけれど、排除する傾向があるじゃない、今の日本って。常に新しいものを追い求め、アンテナを張っていなきゃいけないでしょ。仕事柄それは仕方ないって思ってるんだけど、たまに窒息しそうになるの。

「あたしはね、そういうのって、つまり流行だけを追い求めるっていうことはどうでもいいことだと思っていたの。クソくらえって思っていたの。周りがなんて言ったって自分さえしっかりしていれば関係ない、自分が良いって思うものだけど信じて育んでいけばいいって思っていたの。そうすればあたしは間違っていないって思って作品を作ってきたの、今まで」

それから未央は機関銃で乱射するように、自分の嫌いな作家、音楽、映画の作品の名前などを言いあげた。そしてひと呼吸して「でもね、自分の作品が認められないってことはね、あたしがくだらなくって何も価値がないって思っている作品より、自分の作品のほうがもっとくだらない、何の価値もないっていうことなのよ」と、言った。

少し伸びた髪の毛。長めに残っている前髪が、唇をぎゅっとかんでいる未央の額にはらりと落ちる。頬の上にかすかに残っているそばかすが、少年と少女の間をさまよっていた。

「そんなことないよ、未央。世の中に価値がないものなんて、何一つとしてないよ。ただちょっと、きみは疲れているんだよ」

ぼくを見つめる未央。夕日が彼女の肩からのぞいていて、ぞっとするくらいキレイだった。

「そうね」と、彼女は言い、いすの背もたれに全体重を押しつけて「そうなのよ」と、天井を眺めながら言った。「あたしは疲れているんだわ、ものすごく」まるで何かの呪文のように未央は言った。
そして目を閉じて、大きくゆっくりと深呼吸をして、ひと言つぶやいた。

「パワーが欲しいの、何もかも変えてしまえるくらいのパワーが」


ブエノス・アイレス
スペイン語の“ブエノス”を英語でいうと“グッド”という意味。
スペイン語の“アイレス”を英語でいうと“エアー”という意味(ちなみに両方とも複数形だ)。
つまりはそういう意味。

美味しい空気。
気持ちのいい空気。
呼吸しやすい空間。
過ごしやすい空間。

生存できる空間。

「あたしにとってのブエノス・アイレスってどこなのかな? 一体どこなんだろう。東京なのかな、やっぱり。日本人だしね。ねえ、哲っちゃんにとってのブエノス・アイレスはどこ? やっぱりここ、東京?

「そうね、哀しいけれど、今現在わかっていることは、東京はあたしにとってマロス・アイレスっていうことね」

未央は今、彼女にとってのブエノス・アイレスを探し出し始めた。

ぼくにとってのブエノス・アイレスはどこだ?
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